親の代から受け継いだ実家には誰も住んでいない、という方も多いのではないでしょうか。しかし、空き家を放置することは様々なリスクを伴います。この記事では、空き家を放置することの危険性と適切な管理・活用法について詳しく解説します。
空き家を放置するリスク
空き家を放置することは、社会的にも個人的にもリスクを伴います。ここでは、空き家を放置することで起こりうる代表的な問題点を詳しく見ていきましょう。
社会的リスク
管理されていない空き家は、防災や防犯面で大きな問題を抱えています。不審者の侵入やホームレスの居住、放火や不法投棄などの犯罪行為を招く恐れがあります。倒壊や建築材の飛散などにより、近隣住民に被害を及ぼす可能性もあるでしょう。所有者不在でも、近隣住民から損害賠償請求を受ける可能性があります。
また、2014年施行の「空家等対策の推進に関する特別措置法」により、周辺環境に悪影響を与える恐れのある空き家は「特定空家等」に指定され、自治体が撤去や修繕を命令できるようになりました。命令に応じない場合は罰則の対象となります。
さらに、2023年4月施行の「管理不全土地・建物管理制度」では、管理が不十分な土地や建物について、利害関係人の申し立てにより、裁判所が管理人を選任し、管理を行うことができるようになります。管理費用は所有者の負担となるため、放置することで予期せぬ出費を強いられる可能性もあるのです。
個人的リスク
空き家を放置すると建物の劣化が進み、資産価値が下がっていきます。雨漏りや結露によるカビの発生、害虫や害獣の侵入など、住宅としての機能が損なわれていくでしょう。修繕費用も高額になる一方です。
さらに、固定資産税の優遇措置が適用されなくなる可能性があります。3年以上無人の家は「非居住」とみなされ、売却時の譲渡所得3,000万円控除が受けられなくなるのです。固定資産税の負担も重くのしかかってきます。
空き家の適切な管理方法
では、具体的にどのように空き家を管理すればよいのでしょうか。ここでは、空き家の適切な管理方法について詳しく説明します。
定期的な換気と通水
空き家は湿気がこもりやすく、カビやシロアリの発生原因となります。定期的に窓を開けて換気を行い、水道や排水の通水を行うことで、湿気を防ぐことができます。換気は月に1〜2回程度、晴れた日に行うのが理想的です。窓を開けて30分〜1時間ほど空気を入れ替えましょう。雨の日は避けたほうがよいでしょう。
通水はトイレや洗面台、キッチンの排水トラップに水を流すことで、悪臭や害虫の侵入を防ぎます。2〜3ヶ月に1回程度、10分ほど水を流すのがおすすめです。
清掃とメンテナンス
定期的な清掃と建物や設備のメンテナンスも重要です。床や壁、天井などのホコリを取り除き、家具や家電をチェックします。カビの発生を防ぐために、湿気の溜まりやすい場所は特に注意が必要です。
屋根や外壁の点検、雨樋の清掃なども忘れずに行いましょう。屋根の劣化は雨漏りにつながり、外壁の劣化は建物の寿命を縮めてしまいます。これらのメンテナンスを怠ると、修繕費用が膨大になりかねないのです。
庭の手入れや除草も、近隣トラブルを防ぐために必要です。放置された庭は害虫や害獣の住処になってしまいます。定期的に草刈りを行い、樹木の剪定もしておきましょう。
専門家への相談
大掛かりな修繕が必要な場合や設備の故障などがある場合は、専門家に相談しましょう。放っておくとさらに大きな問題につながる可能性があります。
例えば、雨漏りが発生した場合、原因を特定して適切な修繕を行わないと、床や壁、天井に深刻なダメージを与えてしまいます。早期発見、早期対処が大切です。設備の故障も専門家に依頼することをおすすめします。素人判断で修理を試みると、かえって状況を悪化させてしまうこともあるのです。
空き家の活用法
空き家の管理と並行して、活用方法を検討することも大切です。ここでは、空き家の代表的な活用法を詳しく紹介します。
賃貸物件としての活用
空き家を賃貸住宅として活用することで、安定的な収入を得ることができます。古い物件でも家賃を抑えめに設定したり、ペット可や事務所利用可能にしたりすることで、入居者を見つけやすくなります。
入居者の生活音や足音が建物の劣化を防ぐというメリットもあります。人の気配があるだけで、建物の寿命が延びるのです。ただし、入居者の管理やトラブル対応などオーナーとしての責任も発生します。
賃貸経営には、一定の知識と覚悟が必要です。物件の魅力を高める工夫や入居者とのコミュニケーション力が求められます。専門家のアドバイスを受けながら慎重に検討しましょう。
事業用物件としての活用
店舗や事務所、倉庫など、事業用物件としての活用も考えられます。住宅用に比べて家賃設定を高くできるというメリットがあります。立地によっては、福祉施設や民泊としての需要もあるでしょう。高齢化が進む地域では、デイサービスやグループホームのニーズが高まっています。観光地では民泊需要も見込めます。
ただし、事業用物件としての活用には、用途変更などの手続きが必要となる場合があります。建築基準法や消防法など、関連法規をクリアする必要もあります。専門家と相談しながら、可能性を探っていきましょう。
地域のニーズに合わせた活用
地域によって、高齢者福祉施設やコミュニティスペース、育児支援施設などのニーズがあります。行政や地域団体と連携し、空き家を地域に必要な施設として活用することも可能です。
例えば、高齢者の見守りや交流の場として、空き家を活用するケースがあります。子育て世代の支援施設として、空き家を提供するケースもあるでしょう。地域の課題解決に役立つ活用法は、所有者にとってもやりがいがあるものです。地域に根ざした活用法を考えることで、空き家は地域の資源として生まれ変わることができるのです。
解体か売却か?判断のポイント
管理や活用が難しい場合、解体や売却を検討することになるでしょう。ここでは、解体・売却の判断ポイントを詳しく説明します。
建物の状態を見極める
老朽化が進み、修繕に多額の費用がかかる場合は解体を検討します。雨漏りや床の沈下、壁のひび割れなど、建物の損傷が深刻な場合は要注意です。一方、適切な管理がなされていて、大きな修繕の必要がない場合は売却が有力な選択肢となるでしょう。ただし、建物の状態だけでなく、土地の価値も考慮する必要があります。
土地の価値を考慮する
建物の状態が悪くても、土地の価値が高ければ更地にして売却するという選択肢もあります。都心部や駅前など利便性の高い立地であれば、更地としての価値は高いでしょう。
ただし、更地にすると固定資産税の優遇措置がなくなるため、売却までの期間も考慮する必要があります。更地にして長期間売れないと、固定資産税の負担が重くのしかかってきます。土地の価値を適切に判断するには、不動産鑑定士などの専門家の意見を聞くことをおすすめします。
解体の補助金制度を確認する
老朽化した空き家の解体には、自治体の補助金制度が利用できる場合があります。解体費用の一部を補助してもらえれば、所有者の負担を軽減することができます。補助金の条件や申請方法は自治体によって異なります。解体前に自治体の担当窓口に相談してみましょう。
不動産会社の力を借りる
解体にしても売却にしても、不動産のプロに相談することをおすすめします。物件の所在地を扱っている地元密着型の不動産会社なら、土地の実情に詳しく、的確なアドバイスが期待できます。
複数の業者から査定を取り、提案を比較検討することが大切です。査定額だけでなく、売却までのスケジュールや売却方法のメリット・デメリットなども確認しましょう。仲介手数料や広告料など、売却にかかる諸経費についても事前に確認が必要です。
これらの費用は、売却価格や売却期間に影響を与えます。不動産会社選びは慎重に行いましょう。実績や信頼性、スタッフの対応力など総合的に判断することが大切です。
まとめ
空き家を放置することは、社会的にも個人的にもリスクを伴います。適切な管理を行い、建物の状態や地域のニーズに合わせて活用方法を検討することが大切です。
管理や活用、売却や解体の判断は難しい問題ですが、専門家に相談しながら総合的に判断していくことが求められます。早めの行動がリスクを回避し、空き家の価値を守ることにつながるのです。
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