近年、適切に管理されていない空き家が全国的に増加しています。空き家解体の補助金制度とは、倒壊の危険がある老朽空き家の解体を促進することで、地域の安全性や景観の向上につながる制度です。この記事では、空き家解体の補助金制度の概要や条件、申請方法について解説します。
空き家が増加している現状と問題点
総務省の調査によると、2018年時点で全国の空き家数は約849万戸、空き家率は13.6%にのぼります。人口減少や高齢化により、今後もさらに空き家は増えていくと予測されています。適切な管理がされずに放置された空き家は、以下のような問題を引き起こします。
- 老朽化による倒壊や部材の飛散で周辺に被害
- 放火や不審者の侵入による火災や犯罪の発生
- ゴミの不法投棄によって引き起こされる不衛生な環境
- 景観の悪化で地域の活力や不動産価値の低下
このように管理不全の空き家は、防災、防犯、衛生、景観など様々な面で地域に悪影響を及ぼします。所有者には空き家の適正管理義務がありますが、解体には多額の費用がかかるため、放置されるケースが後を絶ちません。
空き家解体の補助金制度とは
空き家の増加に伴い、国や自治体では補助金制度を設けて解体を後押ししています。ここでは、空き家解体補助金の目的や背景、補助金の支給元について解説します。
補助金制度の目的と背景
国は空き家対策特別措置法を2015年に施行し、倒壊の危険がある「特定空き家」の除却を市区町村へ促すなど、空き家対策を進めてきました。さらに、国土交通省では2014年度から「空き家再生等推進事業」を開始し、空き家解体コスト用の一部を補助する制度を設けました。
地方自治体でも、国の補助制度を活用しつつ独自の補助金制度を設立し、地域の安全や景観を守るために空き家の解体を強力に推し進めています。自治体にとっては、将来の行政コストの削減や跡地の有効活用にもつながる重要施策の一つといえます。
補助金の支給元は自治体
空き家解体に補助金を出すのは、基本的にその空き家が所在する自治体です。国は自治体に対して補助金の財源を交付する立場にあります。つまり、空き家所有者が直接国に補助金を申請することはできません。
実際に空き家解体の補助金を支給するのは、その空き家が所在する市区町村です。国土交通省は各自治体に対して、補助金の原資を交付する立場にあります。したがって空き家所有者が直接国に補助金を申請することはできず、必ず空き家のある自治体に相談する必要なのです。ただし、すべての自治体で補助金制度が整っているわけではありません。制度の有無や内容は自治体によって異なるため、まずは管轄の自治体に問い合わせてみましょう。
空き家解体補助金の上限金額と条件
補助金の上限額や支給条件は、自治体ごとに異なります。ここでは、補助金額の決まり方や主な支給条件、優先的に補助対象となる「特定空き家」の解説をします。
補助金の上限は自治体によって異なる
補助金の金額は自治体によって大きく異なります。補助金の上限を100万円に設定しているところもあれば、30万円程度のところもあります。また、補助金の支給額は「解体工事費用の○割」という形で決められていることが一般的です。解体費用の1/2や2/3などが目安となりますが、それに加えて「○万円を上限とする」との但し書きがつくことも多いためしっかり確認しましょう。
補助金支給の主な条件
空き家解体の補助金支給には、様々な条件が設けられています。老朽度合いや利用実態、所有者の納税状況、跡地の利用計画など、自治体によって異なる基準があります。
主な条件としては以下のようなものがあります。
- 一定期間(例:1年以上)使用されていない住宅
- 現行の耐震基準を満たしていない住宅
- 老朽化が進み、倒壊や部材飛散の危険性が高い住宅
- 所有者に税金の滞納がないこと
- 解体後一定期間は更地にしておくこと
このほか、補助金申請は解体工事着工前に行う必要があるなど、手続き的な条件もあります。対象となる空き家の定義は自治体によって様々ですが、地域の安全性向上に寄与するかどうかが重要なポイントになります。
「特定空き家」の解体は優先的に補助対象に
老朽化が著しく、倒壊などの危険性が高い空き家は「特定空き家」として、自治体が優先的に除却を促します。法律上の定義や判断基準があり、補助金の支給対象となりやすい傾向にあります。
そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある空き家は、「特定空き家」として自治体が指定します。特定空き家の判断基準は自治体によって多少異なりますが、国土交通省のガイドラインでは以下の項目などを参考にするよう定めています。
- 建築物の著しい傾斜、屋根や外壁の脱落
- 多数のシロアリや野生動物の侵入、木材腐食
- ゴミの堆積、不衛生な池や井戸の放置
- 立木の腐朽や倒壊、枯れ枝の飛散の危険性
このように特定空き家は、周辺への悪影響が甚大なため優先的に解体を促すべきとされ、自治体の補助金支給の対象になりやすい傾向にあります。
空き家解体補助金の申請方法と流れ
空き家解体の補助金を申請する際の具体的な流れを解説します。事前相談や現地調査から始まり、申請書類の提出、解体工事の実施、補助金交付までの一連の流れを追います。
事前相談と現地調査
補助金申請の第一歩は、空き家所在地の自治体への相談です。その際、どのような書類が必要かの説明を受け、現地調査の日程を設定します。自治体の担当者が現場に赴き、建物の危険度を判定します。空き家を解体したい場合、まずは空き家のある自治体の担当窓口に相談します。補助金制度の概要や申請に必要な書類などの説明を受けましょう。
次に役所の職員が現地を訪問し、空き家の状態を確認します。倒壊の危険性や周辺への影響度合いなどを判定し、補助金支給の可否を審査します。この現地調査が通らないと、そもそも補助金の対象になりませんので、事前にある程度空き家の状況を把握しておくことが大切です。
申請書類の提出
現地調査を経て補助金支給の対象と認められたら、本申請の手続きに入ります。各種書類を期限内に過不足なく提出することが求められます。主な提出書類は以下の通りですが、自治体によって異なります。
現地調査の結果、補助金支給の対象と認められれば本申請の手続きに入ります。役所の指示に従って、書類を過不足なくそろえましょう。申請が認められると補助金交付決定通知書が送られてきます。
解体工事の実施と完了報告
補助金交付が無事に決定したら、いよいよ解体工事の実施です。自治体によっては、工事着工までに期限が設けられていることもあるので注意しましょう。また、補助金支給の条件として、工事は建設業の許可を持つ業者に依頼する必要があります。
工事が完了したら、役所に完了報告を行います。現場の写真を添付して補助金申請時の計画通りに解体されたことを証明します。
補助金の交付
完了報告が受理されると、補助金が指定口座に振り込まれます。ただし、補助金の交付は解体工事完了後であり、工事にかかる費用は一時的に全額自己負担する必要があります。完了報告が受理されれば申請した補助金が振り込まれます。
補助金の入金をもって、一連の補助金申請の手続きは完了です。解体工事にかかる費用は、住宅の構造や規模によって大きく異なります。補助金を利用できたとしても、自己負担額は数十万円から100万円以上になることも少なくありません。
まとめ
空き家解体にかかる費用の一部を補助する自治体の補助金制度について、概要や申請の流れを解説しました。倒壊の危険がある老朽空き家の解体を促進することで、地域の安全性や景観の向上につながる制度です。
しかし、補助金の対象となる空き家の定義や支給額、申請手続きの方法は自治体によって異なります。また、解体費用は一時的に全額自己負担する必要があるなど、手続き的にハードルもあります。
弊社「池戸建設株式会社」では、建設と不動産の知見を活かした空き家解体の補助金申請をトータルでサポートいたします。調査や見積もりの段階から、申請書類の作成、工事の実施まで、専門スタッフがお客様に寄り添って対応します。
大切な資産である空き家をこのまま放置するのは損です。倒壊のリスクを早期に取り除き、跡地の有効活用につなげるためにも、ぜひ補助金を利用した解体をご検討ください。